ねえ智也くん、この論文のタイト…
解説
ねえねえ智也くん、この論文のタイトルにある『スパン・ラベリング』って何?美味しいパンのラベル貼りのバイトの話?
……パンじゃなくて『スパン(Span)』、つまり文章の中の『特定の範囲』のことだよ。文章から人名を見つけたり、文法のミスがある場所を特定したりするタスクのことだね。
あ、そっちか!でもLLMなら「ここがミスだよ」って教えてくれるのなんて簡単じゃない?
それが意外と難しいんだ。今のLLMは文章を新しく作るのは得意だけど、元の文章の『何文字目から何文字目まで』って正確に指し示す仕組みを持っていないからね。
えー、あんなに賢いのに?「ここだよ!」って指差すだけなのにね。
そう。例えば、元の文章をコピーしてタグを付ける方法だと、LLMが勝手にタイポを直したり、言葉を変えちゃったりして、元の場所とズレることがあるんだ。数字で位置を答えさせようとしても、LLMは文字数を数えるのが苦手だから、デタラメな数字を言うこともあるし。
あはは、親切心が裏目に出ちゃうんだね。お節介な親戚みたい!
そこでこの論文が提案したのが『LOGITMATCH(ロジットマッチ)』っていう手法なんだ。これは、LLMが答えを出力する時に、無理やり『元の文章にある言葉以外は喋っちゃダメ!』って制限をかけるんだよ。
えっ、どうやってそんな魔法みたいなことするの?口を塞いじゃうの?
「ロジット」っていうのは、LLMが次にどの単語を出すかの確率のことなんだけど、その確率を操作するんだ。スパンを抜き出すモードの時だけ、入力テキストに存在しない単語の確率をゼロにする。これで、勝手なアレンジを物理的に不可能にするわけだね。
なるほど!「カンニングペーパーにある言葉以外は書いちゃダメ」っていう厳しいルールを作るんだね。それなら間違いようがないかも!
その通り。実験でも、人名を見つけるタスクや文法ミスを探すタスクで、従来の方法よりずっと正確に場所を特定できたみたいだよ。特に、同じ単語が何度も出てくる文章でも、何番目の単語かをちゃんと区別できる工夫もされているんだ。
すごいじゃん!これがあれば、私のレポートの誤字脱字も完璧に見つけてくれるかな?
理論上はね。この手法のいいところは、LLM自体を改造したり学習し直したりしなくていい点だ。今あるモデルに、出力のルールを追加するだけで使えるから、すぐにでも応用できるよ。
じゃあ、将来は「ここが間違ってるよ!」って正確に教えてくれるAI家庭教師ができるかもね。でも、智也くんの厳しいチェックがAIに代わっちゃうのはちょっと寂しいかも?
……僕は別に厳しくしてるつもりはないけど。ただ、まだ課題もあって、今のところは自分の手元で動かせるモデルじゃないとこの制限をかけるのが難しいんだ。API経由だと自由度が低いからね。
そっか、まだ「どこでもドア」みたいにどこでも使えるわけじゃないんだね。でも、AIがちゃんと『指差し確認』できるようになったのは大きな一歩だね!
よし、私もこのLOGITMATCHを使って、智也くんの隠してるお菓子の場所を正確に特定しちゃおーっと!
それはスパン・ラベリングじゃなくてただの家宅捜索だろ。あと、お菓子なんて隠してないから。
要点
- LLMは文章生成は得意だが、入力テキストの特定の範囲(スパン)を正確に指定してラベルを貼る「スパン・ラベリング」が苦手である。
- 既存の手法には、テキストにタグを埋め込む「Tagging」、文字の位置を数字で示す「Indexing」、該当箇所を抜き出す「Matching」の3つの系統があるが、それぞれ書き間違いや数え間違いなどの弱点がある。
- 新手法「LOGITMATCH」は、LLMがスパンを抽出する際に、出力できる単語を元の入力テキストに存在する単語だけに制限する「制約付きデコーディング」を行う。
- 実験の結果、LOGITMATCHは従来の手法で起きていた「勝手に文字を修正してしまう」問題を解消し、固有表現抽出や文法誤り検出などのタスクで高い精度を記録した。
- この手法はモデルの再学習が不要で、既存のLLMにそのまま適用できるため、実用性が非常に高い。