解説ねえ智也くん、この「INS…
解説

ねえねえ、智也くん!これ見て!『T-pro 2.0: An Efficient Russian Hybrid-Reasoning Model and Playground』って論文のタイトル。なんかすごそう!ロシア語のAIなの?

ああ、それか。確かに面白い論文だよ。要するに、ロシア語に特化した高性能なAIモデルを作って、しかもそれを誰でも使えるように全部公開したって話だ。

へえ〜!でも、なんでわざわざロシア語に特化する必要があるの?英語のAIを翻訳させればいいんじゃない?

それがそうでもないんだ。多くの多言語AIは、英語中心に作られているから、ロシア語のようなキリル文字を使う言語をうまく扱えないことが多いんだよ。単語を分解する単位、トークンって言うんだけど、それが非効率で、性能も落ちちゃう。

トークン?分解する単位?なんか難しそう…。でも、このT-pro 2.0はそれを解決したってこと?

そう。この研究では、まずキリル文字に「密な」、つまり効率的なトークナイザーを作った。これでロシア語のテキストをコンパクトに、しかも正確に処理できるようになった。

なるほど!それで「ハイブリッド推論」って何?二段階ロケットみたいな?

(笑)違う違う。ユーザーが選べる二つの答え方のモードだよ。「直接回答モード」は、質問に対してすぐに答えを出す。速いけど、複雑な問題は苦手。

もう一つが「推論トレースモード」。これは、答えに至るまでの考え方のステップを全部表示しながら答えるんだ。時間はかかるけど、難しい数学の問題とかには向いてる。

あ、それ便利かも!自分で勉強する時とか、AIがどう考えたか見られると参考になるね。で、速くする工夫もしてるんでしょ?

うん。それが「投機的デコード」って技術で、EAGLEって方式を採用してる。簡単に言うと、小さな予測モデルが「次はこの単語が来るんじゃない?」って先回りして提案して、本番の大きなモデルがそれを検証するんだ。当たってればラッキー、って感じで全体のスピードが上がる。平均で約1.85倍速くなったって書いてある。

すごい!で、実際の性能はどうなの?実験したの?

もちろん。ロシア語の一般知識テストや対話テスト、それに数学のオリンピック問題みたいな難しい推論テストで評価してる。ほとんどの項目で、他のオープンなロシア語AIモデルより良い成績を出してる。特に、彼らが新しく作った「T-Math」っていう数学問題のベンチマークで良い結果を出してるね。

すごいなぁ…。でも、なんでこんなに全部公開するの?モデルもデータも。会社だったら秘密にしそう。

そこがこの研究の大きな意義だと思う。ロシア語のAI研究って、高性能なモデルは企業のクローズドなAPIでしか使えなかったり、研究の土台になるデータが少なかったりしたんだ。

これを全部オープンにすることで、他の研究者がすぐに研究を始められたり、企業が応用サービスを作りやすくなる。エコシステム、つまり研究と応用の生態系を育てようとしてるんだ。

生態系!かっこいい!未来のロシア語AIがどんどん育っていく感じ?

そういうこと。あと、公開されてるウェブデモもすごく教育的だよ。二つのモードを並べて比べられたり、速さの違いが数字で見られたり。AIの中身を外から覗き見るような感覚で、勉強になる。

私も触ってみたい!…でも、課題とかはないの?

もちろんあるよ。今はテキストだけの対応だし、投機的デコードの速度アップも、数学や科学の文章の方が効果が高くて、歴史や文学のような文章だと少し効果が落ちるって結果が出てる。あと、32Bパラメータって大きいけど、もっと小さくて速いモデルも必要だろうね。

将来は、もっと多様な言語に対応したり、画像や音声も理解できるマルチモーダルなモデルに発展させたり、この効率化の技術を他の言語にも応用する研究が進むんじゃないかな。

ふむふむ…。ところで智也くん、このT-pro 2.0に『アナと雪の女王』のあらすじをロシア語で説明させたら、すごく速くて正確なのかな?

…はあ。それより、論文の内容をちゃんと理解したか、君に説明させた方がよっぽど研究になるよ。
要点
T-pro 2.0は、ロシア語に特化したオープンウェイトの大規模言語モデルで、ハイブリッド推論(直接回答と段階的推論の両方)をサポートしている。
効率的な推論のために、キリル文字に最適化されたトークナイザーとEAGLE方式の投機的デコードを採用し、応答速度を約1.85倍向上させた。
ロシア語の推論研究を促進するため、T-Wix500k(最大のロシア語ハイブリッド推論データセット)、T-Math(数学オリンピック問題ベンチマーク)、モデルウェイトなどを公開している。
公開されたウェブデモでは、推論モードと非推論モードの比較、推論最適化の可視化が可能で、研究と応用の両方に役立つプラットフォームを提供している。
評価実験では、ロシア語の一般知識、対話、推論の各ベンチマークで、既存のオープンソースモデルを上回る性能を示した。